「写楽は北斎である」(田中英道)

 江戸東京博物館ボストン美術館浮世絵名品展が11月30日まで開かれている。A塾の仲間と22日に鑑賞しに行くことになっている。いままで浮世絵は写真でしか見たことがない。A塾に行き始めてから、先生から時々浮世絵の話が出る。先生は、西洋美術史が専門なのだが、日本の芸術も幅広く研究していて、造詣が深い。「写楽は北斎である」という本も書かれている。
 江戸東京博物館に行く前に、先生のこの本で浮世絵のことを少し勉強してみようと思った。
 写楽は生没不詳で1794年5月に忽然と現れて翌年までのわずか10ヶ月。その間に全部で140余点の作品を残して、忽然と消えた謎の浮世絵師である。先生は、写楽の作品はほとんどが役者絵だが、その中にわずか2点残した武者絵に、“写楽は北斎である”という、謎を解く鍵があったと語る。
 写楽が誰であるかという謎には、多くの人がいろいろな説を唱えている。梅原猛は歌川豊国説、その他、喜多川歌麿説、山東京伝説、阿波の能役者、斎藤十郎兵衛説、鳥井清正説、版元の蔦屋重三郎説、等々それらの説を一つ一つ実際の絵を解説しながら論駁していく。私は疑い深くないので、本を読むと大概、その人の説に、なるほどと感心して、信じてしまう。疑うつっこみ力が足りないのかも知れない。そんなわけで、この本に洗脳されて、なるほど“写楽は北斎だった”のかと、感心してしまった。

 私は、名前こそ多少は覚えているが、誰がどんな絵を描いたのか知らない。写楽の「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」や北斎の「神奈川沖浪裏」、安藤広重の何枚かの絵くらいは記憶にあるが、それらの絵が、どういう状況の中で、どのように描かれたかなど、ほとんどいっていいほど知らなかった。また、江戸文化や歌舞伎の理解があると、浮世絵をよりよく、理解、楽しむことができるのだろうとが分かった。残念ながら、Henryには歌舞伎を楽しむ経験がない。これからは手始めに少しずつ、テレビで歌舞伎なども鑑賞しようと思う。
 今回、この本で、いろいろな浮世絵作家が、どういう状況の中で何をどのように描いたのかが分かって面白く、かつ、勉強になった。しかし、学者というものは、自分の説を論じるのに、ここまで詳しく調べ研究するのかと、あらためて感心した。
 以前から、ボストン美術館にはたくさんの浮世絵が保存されていると聞いている。今回はその中から159点が一挙公開されている。広重、写楽、北斎、豊国、歌麿、春信、他、著名な絵師の作品が見られるようだ。
以下のurlから「ボストン美術館浮世絵名品展」の内容が画像入りで楽しめます。その中で歌舞伎役者の市川亀治郎が「市川亀治郎の語る浮世絵の魅力」として、6枚ほどの絵を、音声入り動画で説明しています。これも面白かったです。是非ご覧下さい。
http://ukiyoeten.jp/
 その他、
http://www.meibis.com/ukiyoe/cata15/s00001.html
でいろいろな解説付きの浮世絵を楽しめます。
 以下のURLでは写楽の絵の解析(画面構成とリズム)をいろいろと書いています。
http://poirot2.hp.infoseek.co.jp/gamen.html
 もっとも、浮世絵収集家としても蘊蓄のある、市川亀治郎は美術館でも解説を聞かずに、自分の目で、自分の感性で、まず見ることを勧めると語っている。
 ともかく、江戸東京博物館で見てから、また感想を書いてみたいと思います。