空海を学ぶ

 A塾の勉強会に3ヶ月ぶりに参加した。今回のテーマは「空海」。
2011年7月20日(水)から 9月25日(日)まで、東京国立博物館 平成館で、「空海密教美術」展が開催されている。勉強会の前に行きたかったが、この猛暑の中、並ぶのもしんどいので、少し涼しくなってから行こうと思っている。「空海密教美術」展については以下のURLで詳しく見ることができます。
http://kukai2011.jp/construction.html
 空海とその密教美術については、関西在住時に、東大寺東寺高野山金剛峯寺醍醐寺、四国の善通寺などに行った際、ある程度の仏像は見てきた。中でも八大童子像は印象に残っている。先生のお話では、東寺などの仏像はそれ以前の仏像に比べ表現が強すぎ、また、表現過多でかつマニエリスムになっていると言う。
 まだまだ仏像勉強が足りず、感性の鈍い小生は、そのあたりの違いが分からなかった。
 空海関係、密教関係の本は、空海の「三教指帰」「般若心経秘鍵」「即身成仏義」「声字実相義」「吽字義」などは解説、注を読みながらでもなかなか理解が難しい。司馬遼太郎の「空海の風景」は空海という“風景”を分かりやすく書いている。密教関係の本は宮坂宥勝のものが、いくらか分かりやすいと思う。生命の海「空海」―仏教の思想〈9〉 (角川文庫ソフィア)は宮坂宥勝梅原猛の共著で空海の著作、思想を比較的分かりやすく解説されている。梅原猛の「空海の思想について」(講談社学術文庫)も薄い本だが分かりやすく書かれている。
 私も多少は空海の思想がわかったつもりになっているが、空海の思想は、書物を読むだけで、また、頭だけで理解しようとする者を、頑として拒否していると思う。

 そんなわけで、先生が空海についてどんなお話しをされるのか楽しみだった。
先生のお話を要約すると以下の通り。多少、メモの取り間違いがあるかも知れませんが、ご容赦下さい。

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空海曼荼羅の中央、大日如来のところに天照大神を置きたかった。
空海の「空」は仏教、「海」は神道。しかし空海は著作の中で、神、神道のことを語らなかった。神のことは語ってはいけない(言挙げしない)と考えたか、神を語る言葉を持っていなかった。
大日如来は太陽神でもあり、自然信仰の神でもある。
・宗教には「個人宗教」と「共同体宗教」がある。この2つの要素を持っていない宗教は、民族の本物の宗教にはなれない。
 仏教は「個人宗教」、神道は「共同体宗教」。日本では神仏習合神仏分離と騒ぐ以前から、日本人の「やまとごころ」の中に“神仏混淆”としてある。
空海の「三教指帰」なかで述べられる儒教道教は「共同体宗教」
・「個人宗教」の仏教と、「共同体宗教」の神道を混淆しようとしたものが空海真言密教である。
空海の肖像画は顔がすべて右を向いている。これは天皇のいる方向を見ているのだという。

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 いつもながら、先生の慧眼には恐れ入ってしまう。と同時にもっと勉強しなくてはという気持ちにさせられる。
 先生の2時間近くの講義の後、会場を提供してくれるK先生とIさん、Hさんの手作り家庭料理をいただきながら、空海談義、東日本大震災のこと、原発のことなど、知的刺激に満ちた懇談の場を楽しむことができた。