五木寛之:仏教の旅

 NHK−BSで仏教の旅を5回シリーズで放映した。後でわかったのですが、1月に放映したものの再放送だった。インド、中国、朝鮮半島、フランス、アメリカ、インドで興った仏教が2500年の間にインドからチベットブータン、中国、朝鮮半島を経て日本にどのように伝わり、日本でどのように変貌、発展してきたか。そしてまた、日本の仏教がフランスやアメリカにどのように伝わったかを五木寛之の目を通して、それぞれの国々の風土、景色、人々の様子を写しながら、“仏教のこころ”を静かに語っている。
 一回2時間でコマーシャルなしだから観るのもちょっとしんどかった。
 どの回も、私には興味深かった。特に、最終回のアメリカ編は面白かった。五木寛之の「他力」が「TARIKI」としてアメリカで出版されたことがきっかけで、「TARIKI」に感銘を受けたという、武道家でカイロプラクティックの療養家のアイエロさんとの対談、典型的アメリカ人の外科医のシーゲルさんとの対談が面白かった。
 一番興味をひかれたのは、1976年に仏像一体と5ドルだけで単身ニューヨークに乗り込んだ、嶋野榮道という僧が、現在、NYから車で3時間ほどの郊外の森の中の湖畔に、大菩薩禅堂金剛寺という僧堂を建て、悩めるアメリカ人に仏道を指導している姿だった。その、僧堂での五木寛之との静かな対話に味があった。
 この嶋野榮道さん、アメリカ人に「仏教という宗教を簡単に説明してほしい」と聞かれて「 I'm sorry. Thank you. I love you. 」の3つだと説明したとのこと。かれは、NYに住んでいるのだが、時々日本に帰ってきて、大阪、京都などで講演もされているようだ。インターネットで検索したら、嶋野さんのアメリカでの金剛寺建立に至る苦心談などが、以下の「超健康が夢  院長日記]というyanagihara.exblog.jpに詳しく掲載されていた。このyanagiharaさんという院長さん、嶋野さんとの交流もあるようで、素晴らしいブログを書いている。
URLは→  http://yanagihara.exblog.jp/4958089
 私が駐在していたLAには浄土真宗の寺院や禅宗関係の寺があった。まさか、NYに金剛寺のようなところがあることを知らなかった。知っていれば、駐在している間に行っておきたかったと悔やまれる。

◆嶋野榮道さんの話の中のトインビーの以下の言葉が印象的だった。
 何百年先の未来に住む人たちが20世紀最大の出来事と考えるものはなんなのだろうか。それは<Transmission of Buddhism from East to West>である、とトインビーは書いていました。つまり、仏法東漸が20世紀最大の出来事であろう、というわけです。

◆またこの大菩薩禅堂金剛寺ができた時に、以下のような記事がニューヨークタイムズに掲載されたという。アメリカのマスコミも粋な記事を書いてくれたもんだ。
 「アメリカ建国100年の時にはフランス政府が自由の女神をプレゼントしてくれた。アメリカ建国200年の時には無名の禅僧がメディテーションホールを贈ってくれた。」

◆yanagiharaさんのブログに仏教の旅、最終回を締めくくる五木寛之のコメントを書いていたのでコピペさせていただきました。

「今宗教に対して世界中が警戒心を強めながら見つめている。それは宗教の対立が文明の対立をもたらしそして民族間の対立をもたらしていると考えているからだ。その宗教の対立の壁を超える宗教が仏教だと感じた。仏教は様々な文化を吸収しつつ、変貌しながら生き続けている。その核は『寛容』の精神で人間の差別をしない、人間は平等、人間は自由、人間は生きる権利がある。それらを静かに言葉に出さず本質の中で語り続けている。21世紀に仏教が果たす役割は大きい。」