「 阿弥陀堂だより」監督:小泉堯史 

DVDで「阿弥陀堂だより」を見た。
阿弥陀堂だより 特別版 [DVD]
 新人賞をとったあと、まったく売れない小説家、自信を失くした夫と、医師としてパニック障害になり、医師としての方向を見失った妻は、夫の生まれ故郷の長野県飯田の村に転居する。夫のおばあちゃんとなじみだった村の阿弥陀堂を守る96歳の老婆、おうめばあさん、村の広報誌におうめばあさんの聞き語りを「阿弥陀堂ものがたり」というコラムに編集する、村の役場の若い女性、小百合ちゃん。彼女は咽頭肉腫の為、声が出ない。その肉腫を手術する妻。
 夫の学生時代の先生とその妻、村の子供たち、人々・・・
淡々と進む人間模様が、飯田村のなんともいえぬ風景、千曲川、白根、妙高、万座などの山々の四季折々の風景と溶け合って、こころにしみこむ。
登場人物の会話のひとことひとことがずしんとくるのだが、何か“軽み”も感じる。
 特に、おうめばあさんは阿弥陀堂を守って96年、真宗の妙好人そのものといった感じで、何気ない会話の一言ひとことは、ずしりと重い。

 私は映画を見て原作を読みたくなるものはほとんどないのですが、この映画は、監督や、俳優たちのこの映画にかけた気持、期待などを聞き、台詞のよさに感動したので原作を読んでみた。一気に読める長さですが、映画同様の味わいを感じることができた。映画を見た直後だけに、しみじみとした四季折々の景色、うつくしく、静かな映像が浮かんできて、より味わい深く楽しく読むことができた。
阿弥陀堂だより (文春文庫)
 最近はほとんどTVドラマを見ていないが、この「阿弥陀堂だより」のようなドラマが少なくなっているのではないだろうか。2,30年前は「日曜劇場」などで、大滝修治、杉浦直樹とか渋い俳優たちが味のある演技をして、いいドラマをやっていたと思う。
 それにしても寺尾聡が父親の宇野重吉にますます似てきた。おうめばあさんを演じた平林民江さんは撮影時92歳(1911年生まれ)で、宇野重吉(1914年生まれ)と劇団民芸を創立した同士。年季の入った、素晴らしいおうめさん役を演じていた。
原作者のプロフィールは以下の通り
南木 佳士
 昭和26(1951)年、群馬県に生れる。秋田大学医学部卒業。現在、長野県南佐久郡臼田町に住み、佐久総合病院に勤務。地道な創作活動を続けている。56年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴く。
平成元年、「ダイヤモンドダスト」で第100回芥川賞受賞

以下のURLで「阿弥陀堂ものがたり」の概要がご覧になれます。
http://www.amidado.com/