「空也上人がいた」 (山田太一:朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

空也上人がいた (朝日新聞出版特別書き下ろし作品)

 家内がこの本を薦めた。小説はどうもまどろっこしいので、普段はほとんど読まない。したがって、家内の勧める小説もたまにしか読まない。
 山田太一の映画はあまり見ていないが、彼の映画を作る姿勢、彼の哲学には共感していた。山田太一が小説を書き、その題名が「空也上人がいた」というのが気になった。空也上人のことを書いたのではないが、何故に「空也上人がいた」という題名につながってくるのか。そこを読んでみたかった。

 山田太一の19年ぶりの書き下ろし力作小説。特養ホームで老婆を死なせてしまった27歳のヘルパー草介は、女性ケアマネの重光さんの紹介で、81歳の老人の在宅介護を引き受ける。介護する側の疲労、介護される側のいたわり。ヘルパーと老人とケアマネの風変わりな恋がはじまる。彼らはどこまで歩いていくのか。そして、心の痛みを抱える人々と一緒に歩いてくれる空也上人とは?重くて爽やかな衝撃作。登場人物は上記の3人しかいない。この3人と空也上人がどういう関係にあるのか。半分ほど読み進まないと見えてこない。静かだが、しみじみとした味わいのある、中高年、シニアむきの物語だと思う。久しぶりに良い小説を読んだ。
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