「池上彰の宗教がわかれば世界が見える 」(文春新書)
池上彰さんは、今年の初め、TVから引退すると言っていた。東日本大震災が起きて、こういうときにやめられないと、TVで原発問題など一般視聴者に分かりやすい解説をしていた。何度か池上番組は見ていたが、本は読んでいなかった。
会社の同期の友人Nさんが、上記の本を読み始めていた。ちょっと見せてもらうと、世界の色々な宗教を分かりやすく説明している。私は、仏教始め、キリスト教、ユダヤ教、ヒンドゥー教、イスラム教、とその解説本、比較宗教関連の本を広く浅く読んできた。
池上さんの本は、世界の宗教を、世界の政治、経済の中での比較や、文化歴史の違いの中で整理し直すにはいい本だと思う。
本の帯には以下のごとく書かれている。
『人はなぜ宗教を求めるのか? 日本人は「無宗教」なのか? スピリチュアルブームの正体は? 仏教、キリスト教、イスラム教の3大宗教から、神道、ユダヤ教まで、7人の賢人と池上さんが読み解いた。世界を正しく理解するために必要なエッセンスがこの一冊に。』
第1章 宗教で読み解く「日本と世界のこれから」
東日本大震災、ビンラディン殺害、中東革命
第2章 ほんとうに「葬式はいらない」のですか?
「葬式はいらない」の著者、島田裕巳(宗教学者)との対談
第3章 「南無阿弥陀仏」とはどんな意味ですか?
浄土真宗の若手住職、「いきなりはじめる仏教生活」の著者、釈徹宗との対談
第4章 仏は「生・老・病・死」を救ってくれますか?
「寺よ変われ」(岩波新書)の著者、長野県神宮寺で仏教、寺の新しいあり方を追求する、若手住職、高橋卓志との対談
第5章 「最後の審判」は来るのですか?
宮城学院女子大、名誉教授、宗教人類学者、クリスチャンの山形孝夫との対談
第6章 日本の神様とは何ですか?
國學院大學前学長、栃木県一瓶塚稲荷神社宮司の安蘇谷正彦との対談
第7章 『コーラン』で中東情勢がみえますか?
東京外語大のアジア・アフリカ言語文化研究所の教授、飯塚正人との対話
第8章 宗教と脳が分かる
「いい死に方」ってなんですか?
養老孟司との対談
養老孟司は「無思想の発見」 (ちくま新書)で書いているが、「無宗教の『無』は仏教の『無』ですよ」と日本人は決して無神論、無宗教ではないといっている。解剖学者 の「八百万イズム」的、“無思想”の考え方には同感する。
おわりに 宗教は「よく死ぬ」ための予習
釈徹宗が「これだけ宗教が自然に根付いている国は、かえって珍しい」と言う。今回の東日本大震災の被災された方々の談話、復興に向けて頑張っている皆さんの姿、などを見聞きすると、その方々の顔が神々しく見えてくる。教義や理屈ではない、自然で素直な信仰心を持っておられると感じる。日本人はこういう信仰心をもっと大事にしていかなくてはいけないと思った。
この本、各宗教をもっと突っ込んで勉強するには、それぞれの宗教についての関連本を読む必要があると思うが、若い人、今までことさら宗教書を読んでこられなかった方には是非一読をお勧めしたい本だと思う。