久保田展弘さんの講演会に行く

 妙齢さんからお誘いを受けて、久保田展弘さんの講演会に行った。朝日カルチャーセンターと三重県の共催で「海の神話と祖先霊~熊野古道伊勢路とアジアの常世国」というテーマでの特別講座ということで聞きに行った。
 久保田展弘さんの本は、寂聴の仏教入門(講談社文庫 )という本で初めて出会った。寂聴さんに久保田さんが仏教全般、特に山の宗教、日本の聖地、修験の世界等を講義しているといった、対談形式になっていて、文字通り、わかりやすい勉強になる、仏教入門書になっている。惜しいかなこの本も絶版になっているようだ。読みたい方は図書館でなら借りられると思います。
 この本で、日本の聖地、修験の世界に興味が出て、久保田さんの以下の本を読んだ。
・ 修験の世界(講談社学術文庫 ) 始原の生命宇宙
・ 荒野の宗教・緑の宗教(PHP新書 ) 報復から共存
・ 日本の聖地(講談社学術文庫 ) 日本宗教とは何か
・ 山の宗教(別冊太陽 ) 修験道とは何か
・ 日本多神教の風土(PHP新書 )
 どの本も私の知らなかった世界を教えてもらい目を開かせてもらった。
 講座では熊野の「花の窟」の神事とその背景、その祭りと、バリ島のガルンガン祭の類似性などを説明する。日本の記紀神話に書かれている「花の窟」の神話の起源は東南アジア、インド、インドネシアから発しているのではないかという推論も興味深かった。

 花の窟神社秋季大祭 御綱掛け神事については以下のURLで詳しく説明されている。
http://www.mikumano.net/photo/21.html
 バリ島に旅行したことはあるが、ガルンガン祭(GALUNGAN)というのは知らなかった。日本のお盆に似た行事でガルンガンは迎え盆、クニンガンは送り盆にあたるとのこと。似たような神話世界の祭りが千数百年もの間続けられていることにも驚く。
 熊野の話だけでなく、ギリシャ神話、記紀神話、折口信夫柳田国男のことにもふれての話など、静かな語り口の中にユーモアもまじえ一時間半があっという間に過ぎた。
 久保田さんの本を読みなおしてみるとともに、別の本を読んでみようと思う。
 講演、講座の類は限られた時間内で、欲張った内容を話されると内容が散漫になってしまうことが多く、かえって消化不良になる。 今日の講座は、テーマが大きい割に「花の窟」と「ガルガン祭」をキーテーマにしての話で分かりやすく面白かった。
 素晴らしい人の話は、やはり、本で読むだけでなく「面綬」がいい。表情と声音(こわね)が内容とともに記憶に残るからだと思う。 この日の講演、平日の午前中なので、私と同年代、60代の男女が150人くらい、会場は満席だった。高齢化が進んで、この手の講座、講演会に参加するシニアが増えているようだ。
 今週は勉強づいている。金曜日には「天武・持統朝の諸問題」という講演を聞きに行くことになっている。“○○のためではない”、聞いてみたいから行く、ただそれだけのことを楽しむのみ。これぞ、“加藤秀俊流-隠居学”の楽しみ方だろうと自己満足している。