「人類は宗教に勝てるか」(町田宗鳳:NHKブックス)
題名に引きずられて読んだ。町田宗鳳の本は「前衛仏教論」、上田紀行との共著、「生きる力としての仏教」など、数冊読んできた。
20年間仏教の修行をし、ハーバードで神学の修士号を取得した比較宗教学者という経歴で、世界の色々な宗教における過去の悲惨な歴史を語り、一神教の神、多神教の神を比較して論じ、それぞれの問題点を指摘する。そういう中で、一神教の神、八百万の神、仏を超越した、無神論でない、“無神教”の必要性を説く。
先に読んだ、養老孟司の「無思想の発見」の中の、“無思想という思想”にも共通する思考があると思う。養老孟司と玄侑宗久の対談集「脳と魂」は、仏教に詳しい養老孟司と、物理学、生物学など理系にも強い、芥川賞作家の現役僧侶が、仏教をベースに闊達な対談をしているのも面白かった。
町田宗鳳のこの本は、彼の経歴のゆえなのか、色々なことを学びすぎ、若干欲張り過ぎで、論理の飛躍が見られないでもない。しかし、現在の、日本の状況、世界の情勢に思いを巡らし、新しい人類社会を目指すべく“無神教”を提言している内容には共感を覚える。
梅原猛、久保田展弘、山折哲雄、阿満利磨、玄侑宗久、養老孟司など、多くの人が同じような問題意識を持って21世紀の宗教、心の問題を考えている。かなり多くの人たちが同じような問題提起をしている。
しかし、昨今の状況を見ると、人類が精神の面、心の問題でもう一段高い次元に進化、飛躍するためには、いましばらく、しゃがみ込みの時間が必要なようだ。そのためにも世界中の人間が、今一度人類の精神の歴史を学びなおして、新しい思想、新しい宗教を創造すること、あるいは世界の宗教の弁証法的止揚が必要なのかもしれない。
以下はamazonの読者レビューの一つ、内容を簡潔に紹介している。他にも一部に賛同はしているものの、厳しい批評をしているものもある。私は、頭が単純なのか、これらのレビューアーのようになかなか批判的に本を読めない。深く突っ込んで読まずに、すぐに素直に感心してしまう。あとでamazonのレビューを読んで、なるほど、こういうところの読みが浅かったのかと反省することも多い。
これも、あらを見つけるよりも、良い所を見つけて勉強しよう、感動しようという、良い性格ではないかと、自分に妥協してしてしまいます。
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本書では、戦争、紛争、経済格差、環境破壊、科学技術の乱用などさまざまな問題を引き起こしている一神教的コスモロジーから多神教的コスモロジーへの転換、さらには、神仏を礼拝するのではなく神仏とともに生きる「無神教」を人類の課題とする。そのために「祈りの力」を信じることを唱える。一見過激にも思えるタイトルではあるが、筆者が主張するのは、我々一人ひとりが愛を持って今という時を生きることであり、それを最も妨げているのがシステムとしての宗教であるということだ。あらゆる宗教を研究した著者の論旨には説得力がある。ここで取り上げられているのは宗教だけでなく、神話や深層心理学、ジョン・レノン、水墨画、俳句と幅広い。「ヒロシマはキリストである」とする最終章は子どもたちにも是非とも伝えるべき内容である。
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この本の終りの方に書かれている、ジョンレノンのImaginの詩を改めて読んだ。町田宗鳳の提起している「無神教」の世界を歌ったものではないかという説明には納得がいった。