神田散策

 東京国立博物館で「伊勢神宮と神々の美術」特別展を見に行った帰りに神田を散策した。家人が図書館で借りた、東京の喫茶店という本に、神田の懐かしき昭和の喫茶店がのことが書かれていたのでそこに行ってみたくなった。
 高校時代、時々神田の書店街は歩いた。社会人になってからも結婚前の家人とデートするのにお茶の水の駅前の名曲喫茶をよく使った。通りを挟んで、たしか「白鳥」、「田園」という大きな名曲喫茶があった。私は「田園」で待つのだが、約束の時間を30分過ぎても現れない。地図の読めない、方向音痴の家人は「白鳥」で待っていたのだ。そんなことが一度ならずあった。若き日の想い出だ。
 現在のお茶の水駅周辺は様変わりしていて、「田園」も「白鳥」もない。坂を下って神保町に向かう。明大や日大の立派なビルも目立つ。神保町1丁目の「ミロンガ・ヌオーボ」「ラドリオ」を目指すがなかなか見つからない。三省堂の裏手、表通りとは時代を異にする細い路地にその2軒は向かい合ってある。
 「ミロンガ・ヌオーボ」はタンゴを聴かせるというのでそちらに行きたかったが、残念ながらお盆休みだった。向かいの「ラドリオ」に入ると、そこはレトロな異空間、レコードから流れるエディット・ピアフのシャンソンを聴きながら生ビールを飲んで、しばし、若かりし昔に思いを馳せた。
 神田では、学生時代に「東方書店」で毛沢東語録などを買った思い出もある。英語のThesaurusやslang dictionary,Quotationなどの辞書をよく買いに行った。このころからHenry君の“Buying Dictionary”癖が始まっていたのだ。
 帰り道、数店の古書店を覗いた。それぞれの古書店が特長を出したものを扱っている。ブックオフとは異なり目にとまる本も多い。
 もう少し涼しくなり、読書の秋にでもなったら、一日かけてゆっくりと散策してみたいと思った。