秩父札所巡礼

 始めて秩父札所に行ってみた。まじめに三十四霊場を回ろうというのではなく、宝登山の臘梅を見るついでに行ったのだから、はなはだ不真面目な巡礼です。今まで何度か秩父に行っているのだが、札所に行ってみようとは思わなかった。今回は、一番札所の四萬部寺と四番札所の金昌寺に行った。
 四萬部寺とは変わった名前ですが、988年に写された四万部の仏典が納められたことに由来する。これにちなんで寺では一般から写経を募っているとのこと。一番札所だけあって、巡礼用の衣装や杖、お経などを売っている。小さい寺だが、朱塗りの観音堂が一番札所風格を見せていた。寺の前の、「旅館一番」というのが趣を添えていた。
  
 四番札所の高谷山(こうこくさん)金昌寺は千三百体以上の石仏があるというので、それが見たくて行った。入口の仁王門には大きなわらじが左右にかけられている。他に巡礼者もおらず、住職もいないので、このわらじの意味も分からない。仁王門をくぐると辺りせましと、大小さまざまな石仏がある。一つ一つの石仏は大きくはないが、数が多いのと、色々な石仏があって味わい深い。

 ちょっと大き目の“飲兵衛羅漢”(私が勝手に名前をつけたのだが)は酒樽に腰をおろし、片手に徳利、もう一方の手で大きな杯を持ってそれを頭にかざしている。よく見ると、樽の下には二人の人間?(鬼か、別の羅漢か分からない)が顔を横にして押さえつけられている。これが何を意味しているのかも分からなかった。
 妙齢さんが、お酒を止められないHenryはこの羅漢を拝みなさいとのこと。ありがたく拝ませていただいた。今までにいろいろな所で、羅漢や石仏を見てきたけれど、こういう石仏は初めて見た。
 
 観音堂回廊にある「慈母観音」はある商人が妻子のために、江戸の浮世絵師に下絵を描かせて彫らせたものだという。赤子が母の乳房を手で引っぱって乳を吸い、もう片方の手も左の乳首をつかんでいる。母親の表情と形がいい。こういうリアルな観音さんも初めて見た。なかなか味わいのある慈母観音でした。

 初めての秩父霊場巡礼(とは言えないか)でしたが、どの寺もそれぞれの由緒と風格がある。また次の機会に今度は巡礼をメインにして三十四札所を回って満願成就したいと思った。